日本ではチョコレートは誰もが手軽に買える身近な食べ物。種類も豊富で、一口にチョコレートといっても様々なものが存在しています。
しかし、その生産の背景にはガーナなどカカオの産地での過酷な児童労働の問題があり、不当な価格での作物の取引で農家の人々の暮らしは非常に厳しく、チョコレートを食べたことがない方がほとんどだといいます。
今回は調理実習で美味しいタルトを作りながらチョコレートが生産されるまでの過程や背景についても学び、大切な方に贈るチョコレートをより愛に溢れたものにしよう!というテーマで行いました。
講師には、沖縄NGOセンターの中村可愛さんをお招きしました。
長年家庭科の先生をされていた経験もある中村さんは、「食」を健康の観点からのみならず、世界の食料事情からも意識されていて、私たちが消費者としてできる具体的な話を聞かせてくださいました。
最初は実習から。
タルト生地を焼き、チョコレートソースを作って、バナナ、ナッツ、イチゴ、ミントなどで飾り付けました。ヴィーガンのタルトということで、乳製品や卵は使わず、お砂糖は精製されていないきび砂糖と黒糖を使いました。また、小麦粉も伊江島産のものを使うなど、有機・無農薬の食品で揃えて下さいました。
印象的だったのは、「食品を選ぶ時に、安いからこれでいいやとならないように。かと言ってネガティブになりすぎないように。」というお話でした。様々な選択肢を知っておいて、少し余裕がある時は良いものを買ってみるなど、自分で選べることが大事とお話しされていました。
実習が一段落した後は、座学。
最初に、チョコレートの食べ比べをしました。
A、B、Cの3種類のチョコレートを食べて、違いを感じてもらいました。
一つは一般的に広く流通しているもの。もう一つはフェアトレードの商品。3つめは、沖縄のチョコレート専門店のもので、カカオと黒糖だけでつくられたもの。
表示を見てみると、一般的に流通している安価なチョコレートは、添加物も多く使われていて、カカオよりも砂糖が多く使われている表記でした。
フェアトレードのこの商品は、カカオだけでなく全ての材料がフェアトレードにより調達された有機栽培のものを使っていて、パケージまで環境に配慮しているという徹底ぶり。
沖縄のチョコレート専門店「タイムレスチョコレート」のチョコレートはBean to barといって、カカオの仕入れから販売に至るまで全ての工程を自分たちで行っています。それにしても、黒糖とカカオだけでこんなにも美味しいチョコレートができることが驚きです。
しかもそれが、沖縄産の黒糖なのが嬉しい!
その後、カカオ農家の抱える問題と児童労働について短くまとめられた映像を見ました。実は、先進国である私たちが無意識のうちに彼らの生活を苦しめているという現実も知り、耳が痛いけれど聞いておくべきことだなと思いました。
「安いから」というだけで食品を選んでいると、自分たちの身体に影響があるだけでなく、生産者を不当賃金で働かせることに加担してしまうことにもなります。
そのあと、ガーナで先生として働く中村さんのご友人とスカイプでつないで頂き、お話を伺うことができました!
ガーナのお店には普段チョコレートは置かれておらず、バレンタインの時期だけ店頭に並ぶそうです。価格は日本と同じくらいか、少し高いくらいとのこと。もちろん、カカオ農家の方たちは買えない値段です。
また、小学校の就学率はなんと107%!どういうこと!?と思っていたら、これは本来は6歳で入学するところを、7歳や8歳で入る子もいるために、100%を超える数字がでていて、純就学率は89%くらいとのことでした。中には、高校生くらいの子が小学校にいることもあり、学業に専念できる環境の子ばかりではないということでした。
また、女子は中学生くらいになると妊娠してしまう子も多く、男女ともに高校まで行くのは全体の7割程度ということでした。
参加者から、彼らの進路は?という質問がでましたが、とにかく仕事がなく農業でも食べていかれないので、日本やアメリカに行きたがる人が多いのだとか。
また、日本に抱く印象は?という質問もでました。こどもたちは中国と一緒だと思っていて、大人は日本といえば車、というイメージを持っているそうです。
ガーナではだまされることも多く、困っている時に助けてくれる人がいなくて大変だったけど今は良い友人に巡り会えたという話を聞きながら、きっと現地の人々は自分たちの生活にいっぱいいっぱいで見知らぬ異国の人に親切にする余裕はないのかもしれないなぁとも思いました。
講座の締めくくりは、今日の実習で作ったタルトの試食!
皆さんの作ったタルト、それぞれの個性があらわれたいろんな作品があり、見ていて楽しくなりました。
美味しいお菓子を作りながら深い学びを得て、とても充実した講座となりました。(真)