8月5日、那覇市若狭公民館で「沖縄教育協働アカデミー8月例会」が開催されました。
沖縄教育協働アカデミーと共催で事業を実施するのは、6月に続いて2度目となります。
沖縄教育協働アカデミーと共催で事業を実施するのは、6月に続いて2度目となります。
開催概要
• 主催: 沖縄教育協働アカデミー
• 共催: 那覇市若狭公民館
• ゲスト: 谷上 元織氏(島根県益田市立戸田小学校 教頭)
• 進行: 南 信乃介氏(NPO法人1万人井戸端会議 代表理事/那覇市繁多川公民館 館長)
• コメンテーター: 井上 講四氏(教育協働研究所「岳陽舎」主宰)
谷上 元織氏 プロフィール:
趣旨
益田市の教育改革における主要テーマ
谷上さんは人間関係を「社会の基盤」、「ソフト面のインフラ」と表現し、その重要性を強調しています。このインフラは「与えられた場所で咲く」だけでなく、「関係性を耕し続ける」ことで構築されると述べています。関係性を育むための条件として、以下の4点を挙げています。
- 受容: 受け入れられること。
- 協働: 共に創ること。
- 挑戦:挑戦をする環境、余白がある。
- 試行錯誤:試行錯誤をしても咎められない。
- 余白: 余裕のある環境、試行錯誤が許される前提。
- 愉しさ: 活動自体が楽しいこと。
谷上さんは教頭として、教員の「安心・安全」な環境づくりに注力しています。自身の役割を「学校や地域を含めた文化を醸成する要」と捉え、職員が「一番相談しやすい」と感じられる存在であることを目指しています。具体的な取り組みとして、以下の点が挙げられます。
- 上機嫌でいること: 「笑顔は顔の筋トレ」と意識し、良い空気を醸成。
- 苦手の開示: 自身の不完全さを隠さず、開示することで、職員が本音を話しやすい雰囲気を作る。
- 主体性の尊重: 「普通はこうだろう」という言葉を使わず、一人ひとりの主体性を尊重。
- 感謝と承認: 相談があれば「ありがとう」「いいね」と肯定的に応じる。
- 「我々」という言葉の使用: 困り事に対して「俺らどうしようか」と、共に解決する姿勢を示す。
- 雑談の活用: 関係性構築のために、業務に関係ない雑談を積極的に行う。
これらの姿勢が、職員の「安心・安全」な環境を生み出し、挑戦や試行錯誤を促していると述べています。
谷上さんが主催する「教師の元気が出る会」は、教員の元気を生み出すための具体的な取り組みの一つです。当初は職員室の延長のような場を目指しましたが、現在は先生方だけでなく教育に関心のある誰でも参加できる開かれた場となり、様々な「化学変化」が生まれているそうです。この会から、若手教員が自発的に子ども向けスポーツ活動や教科の勉強会を企画するなど、「勝手に作り始める」姿が見られると報告されています。谷上さんは、こうした活動を強制せず、「勝手にやってほしい」「どんな感じだったか教えてほしい」というスタンスで主体性を尊重しています。
また、「モチヨルmorning」という、ただ一緒に朝食を食べる(若狭公民館の「朝食会」のような)場も開催されており、ここから「コミュニティ居酒屋」のような企画が生まれ、教員が料理の腕を振るい、エネルギーを発散する「安心安全の場」となっています。
益田市では、地域と学校の協働を重視しており、コミュニティスクールもその一環として推進されています。谷上さんは、地域に赴任した教員が地域と連携する上では、日々の「対話」の重要性を強調しています。
- 子どもたちの変容の共有: 子どもたちの姿を話題に雑談する中で、地域との交流が子どもたちの変容に繋がることを細かく伝え、その価値付けを行う。
- 既存の教育課程と地域連携を一体化させるマネジメント: 学校の教育課程やカリキュラムを工夫し、一つの取り組みが複数の目標(例:地域学習と教科の学習)を同時に満たすしkみを考えることで、教員の負担を軽減し、地域連携を促進。
- 運営協議会での「対話」重視: 学校協議会において、職員と委員が「安心安全の場」で対話を行うことを重視し、「子どもたちに体験させたいこと」や「地域に必要なこと」を出し合う場とすることで、共に創り上げる意識を高めている。
- 柔軟な運営: 運営協議会を柔軟に運用するため、一部の活動については会議を経ずに有志による「ミニ作戦会議」で決定し、後で報告する仕組みを導入。これにより、地域の人が主体的に企画・実行する機会が増え、当事者意識が高まる事例も紹介されています。
- 課題とニーズの重ね合わせ: 学校の課題(例:草取りの負担)と地域のニーズ(例:地域の繋がりを耕したい)を重ね合わせることで、「課題がハッピーな活動になる」事例も生まれている。
- 活動の場で重視する要素: 活動の場では、「やってみたいが実現できる」「困りごとを発信できる」「共通体験を共有できる」「大人がシンデ(困っている子ども)のために集まる」といった要素を重視。
益田市には「社会教育コーディネーター」という制度があり、学校内に席を置き、教育活動のサポートや地域との橋渡し役を担っています。谷上氏は、コミュニティスクールはあくまで「制度」であり、大切なのは「スクールコミュニティ」を通じて「文化を醸成する」ことだと強調しています。
地域基盤が弱い場合の連携については、谷上氏は「積み重ね」が必要であるとし、コーディネート役がいる場合、まずは「できるところからやる」ことが大切だと述べています。小さな活動や小さな繋がりでも、それらを「掘り起こし、認めていく」ことの重要性を強調しています。運営協議会の制度にこだわりすぎず、実際に活動する人々(実動する皆さん)を大切にし、有志での集まりから掘り起こしていく姿勢が示されています。
結論と示唆
益田市の教育改革は、「ひとづくり」を核に、人間関係の質を高めることを重視したユニークなアプローチを展開しています。特に、谷上さんのような現場の実践者が、教員の働き方改革や地域連携といった課題に対し、対話と「安心・安全」な場づくりを通じて、教員と地域住民の主体性を引き出し、自発的な活動を促している点が注目されます。
那覇市ではどのような取り組みが必要とされているのか、学校や地域、多様な主体と「対話」を通じて見出していきたいです。