2022年11月7日月曜日

なは防災キャンプ' 22 秋(那覇市津波避難ビル)(2022.11.4〜5)〔レポートその一〕

  11月4日〜5日の日程で「なは防災キャンプ' 22 秋 (那覇市津波避難ビル)」を開催しました!会場は津波襲来時に24時間365日避難できる施設、那覇市津波避難ビルです。



まずは、「防災キャンプ」ってなに?という人もいると思いますので、簡単に説明します。

防災キャンプとは「防災訓練」と「キャンプ」をかけあわせて、宿泊しながら擬似避難体験をしようという企画です。
防災キャンプには3つのルールを設けています。

①自己完結
②シーズン毎にやる
③できれば宿泊する

日帰りの訓練だと、終わったら帰宅してお風呂に入り、ご飯を食べますよね。では宿泊となるとどうでしょう?
防災キャンプでは、公園など避難所になるような場所で過ごすためにはいったい何が必要なのか、自分で考え、そして季節に合わせてどのように過ごすかをそれぞれ考えてほしいという狙いがあります。
そして宿泊体験を通して様々なことに気づき、今後に生かしていくことを1つの目的としています。  


津波避難ビル屋上(防災さんぽの様子)


那覇市津波避難ビルがどこにあるのか?どのように避難できるのかわからない人も多いと思います。
那覇市松山の旧若松市営住宅跡地に2016年に完成したビルで、津波来襲時には24時間365日いつでも一時避難することができる施設です。3階以上のスペースには最大2000人以上が一時避難できると想定され、台風や高潮などの風水害時も避難所として活用しています。1階には地域の生活を支える24時間稼働のスーパーがあり、平常時においては、青少年から高齢者まで、世代を超えた地域の方々が交流している施設となっています。


津波避難ビル内には備蓄倉庫も配備されています。

まず、最初は受付にて防災キャンプを行う上で大切にしている「もしもカード」や「わたしにできること」を参加者に書いてもらいました。



「もしもカード」は自分のことや家族との決まりごとなどを書くことにより、普段からイザ!という時の対応を考えてもらうことをねらいとして記入してもらいました。
さらに、避難所でのニーズ(避難者に足りない物や知識・手助け・etc...)と「私こんなことができます」(避難者ができること、例えば英語ができます、とか、医者です、とか、お手伝いができます、etc...)について、受付にて申告していただき、その内容を掲示・マッチングを行いました。






防災さんぽ

那覇市津波避難ビルの平時と非常時の機能について、那覇市津波避難ビル儀間館長に案内していただき、関連する補足コメントを防災士・災害ソーシャルワーカーである稲垣 暁 氏からいただきました。お二人のガイドのもと参加者と共にビル内・外をさんぽしながら学びました。


(左)儀間さん (右)稲垣さん


電気設備



那覇市津波避難ビルの施設内トイレや通路の電気は真夜中に避難してきて、電気スイッチなどで迷わないように、自動で消灯するようになっています。センサーで近づくと自動で進行方向が点灯しスムーズにトイレに行けるようになっています。

そして、火災などが起こった際、難聴者に異常を知らせるために、各トイレには点滅する照明器具も設置されています。

停電しても発電できる施設となっており、非常照明と非常用コンセントが72時間(約3日間)使用できるようになっています。

災害時に課題の1つとなるトイレについても地下に貯めている再生水をポンプで汲み上げ、非常電源で可動させ使用することができます。

非常用電源は太陽光発電・発電機(重油で稼働)が設置されており、3階にあるシャワールームなどのお湯は発電して沸かしており、停電してもお湯がでるそうです。

雨水タンクはスーパー駐車場に設置されており、5トン貯水できます。

備蓄倉庫


屋上にある2つの備蓄倉庫を案内していただきました。



2つの備蓄倉庫には、食料やマット、段ボールベッド、マスク、消毒液、ガソリンで動く発電機などが備蓄されています。

その他、他施設で水害などでダメになった備蓄などを回収して、仕分けしたり、他の避難所へ備蓄を発送できるようにしています。

下のスーパーマーケットと協定を結んでいるので、一階部分の被災がなければ、食料や食料品の提供ができるにしているそうです。


防火扉・非常用出入口


那覇市津波避難ビル内にある、非常出入口、3階の防火扉はこちらの特殊な鍵になっています。

津波来襲時・災害時は下記の手順を行うと24時間365日いつでも開場することが可能となっています。



この手順で行うと誰でも施錠を解除することが可能ですが、平時はセンサーが作動して警備会社が駆けつけるので、気をつけましょう。

実際の開閉様子はこちら



マンホールトイレ


建物駐車場にあるマンホールは災害時にトイレになります。

今回はマンホールトイレを設置する機会はなかったのですが、春に行った防災キャンプで開閉を動画で収めています。

和式タイプはこちら(こちら



実際に参加者が入ってみました


使用中の表示がでるようになっています

実際に入った人からは「暗いので、夜に使用する時など足元などの不安がある」「換気口のようなものがないから息苦しさがある」と言っていました。

こちらは洋式のトイレですが、カバーが大人4人がかりの設置になりました




大掛かりの設置ですが、洋式のトイレは座りやすいですね

洋式トイレは(こちら


スロープ


スロープの入り口はドアはスロープの折り返しの位置にあり、これは津波が入り口に直接入って来れないような工夫になっています。入りにくいと意見があったそうですが、折り返しの場所に入り口を設けたのはそのような理由があったのですね。



車椅子避難の様子



その後、参加者での振り返りを行いました。



防災さんぽでの感想

  • 那覇市の職員ですが、津波避難ビルの機能を知ったのは初めてだった。
  • いつでも入れる(避難できる設備)はすごかった
  • (中学校の)授業では話しか聞けない、実際に体験できたのはよかった
  • 避難するのも大変ですが、避難生活するのも大変だと感じた
  • 若狭の児童と一緒に津波避難ビルで防災キャンプをしたい。地域の子どもたちが避難できることを知ってもらえる事業をおこないたい。


防災さんぽで浮かび上がった課題

備蓄について

  • ペットや赤ちゃんなどの備蓄がない。粉ミルクやオムツなどがない。アレルギー対応なのか不安がある。
  • 災害時に行政職員が来れなかった場合、地域住民に食料配布や避難所運営の協力をお願いすることになるが、その体制が作れていない。
  • 災害時に津波避難ビルに早くきた人が一番手厚い支援や場所を取ることがないように、障がい者や高齢者に配慮したルール作りが必要。
  • 食料備蓄などは一時避難する人向けなので、地域住民が食料や備蓄だけをもらいにくることができない。
  • 避難者のカウントや情報を把握することが困難になる可能性がある。
  • ペットが原則避難することができない。
  • 市民が発言して備蓄ややり方に関しても声をあげていく必要がある。

  • 担架や車椅子は屋上まで上げることは難しい
  • 赤ちゃんようの粉ミルクや哺乳瓶はないという。避難所だからと完璧ではないことを知った
  • 乳幼児の備蓄がないことは衝撃的だった
  • お子さんやペットの備蓄はないので、避難する時に行政頼みで避難は危険

車椅子について
  • スロープを車椅子だと重かった
  • スロープの幅が狭かった。災害時に皆さん急いでいるなか、車椅子は大変
  • ベビーカーを押したり、手助けできる余裕があればいいと思った
  • 総合の授業で車椅子に乗った経験がある。自分で車椅子を進めるのは大変だと感じた
  • 建物周辺はガタガタ道だったりするので、車椅子は大変。
  • 車椅子を坂の途中で手を離すと大変。
  • 自転車などで避難してくる人もいるだろう上に登る人も我先に上がるはずなので、車椅子やベビーカーは見えなくなる可能性がある。
  • 実際走ってみると1分半ぐらいかかる。スロープは長いので、避難時は何階にいるのかわからなくなる。
  • 今日使った車椅子は施設内移動用 外を走る機能をしていない シートベルトない
  • 実際の車椅子はもっと軽い、慣れない人が車椅子を補助しようとすると人を転倒させてしまう可能性がある

避難所について
  • 持病を持っている人が生活、避難していくのはどのようになるのか気になる。
  • ゴミはどのように処理するか気になる。オムツや嘔吐物などの処理についても考えていく必要がある。
  • 市民に津波避難ビルが周知が大切
  • ペット同行避難を考えると荷物が大変。屋上まで荷物が2度ほど往復した
  • 地盤がどのようになっているかわからない。琉球石灰岩になっている
  • 川が隣に流れているので、周辺は地盤が緩い
  • 外付けの外階段・スロープは建物の構造的には倒壊の危険性がある。倒壊すると、想定している避難ができない可能性がある。
  • 中に入ってくる人と外にでたい人が密集すると韓国で起きたような密集事態となり圧迫する危険な状態となる
  • 水栓トイレがあると周辺地域から押し寄せてくる。(病院にも押し寄せてくる事例があった)
  • ゴミの分別に対して、回収車もこない、感染症のリスクもある
  • 高齢者や赤ちゃんのオムツがどう処理するかも課題になってくる
  • 全ての課題を行政に投げるのではなく、自分たちで手助けを
  • 行政が全てを援助してくれるわけではない、行政に頼みになると市民も行政もひっ迫した環境になる。
  • ドクターヘリは着陸することができない。降ろせる場所は那覇市は少ない

参加者で話し合い、課題や資源をみつけていく



那覇市防災危機管理課 屋良課長も参加してくれました

翌日の総合防災訓練の準備でお忙しい中、那覇市防災危機管理課 課長の屋良さんも話し合いに参加してくれ、「今の参加者の声や意見が反映されて、市民に那覇市津波避難ビルというものがたくさんの人に広まってくれたら嬉しい」と話してくれました。


レポート二では夜のテントや持ち出し品などを書いていきます。(こちらから


報告動画は(こちらから





主催:NPO法人地域サポートわかさ / 那覇市若狭公民館

共催:一般社団法人災害プラットフォームおきなわ / 那覇市防災危機管理課

助成:おきぎんふるさと振興基金