今回は、対馬丸記念館を拠点に活動する「つしま丸児童合唱団」についてご紹介します。対馬丸事件の悲劇を語り継ぎ、平和への願いを歌声に乗せて発信する子どもたちの活動は、私たちの地域にとって非常に大切なものです。
「つしま丸児童合唱団」は2012年6月に結成されました。現在那覇市内および市外の小学1年生から6年生までの子どもたちが団員として参加し、毎週土曜日の午前9時15分から11時30分まで対馬丸記念館に集まって活動しています。
この合唱団は「子どもたちの豊かな心・広い心を育みながら、世界に平和の響きを発信していこう」という目的で活動しています。
活動は10年を超えて対馬丸記念館は、子どもたちにとって歌を歌うだけでなく、安心して過ごせる「居場所」となっています。
毎週土曜日の活動は、前半が英語あそび。体を使い遊びながら英語の音に触れ、コミュニケーション力を養います。
後半は合唱活動です。合唱活動では、平和に関する曲を中心に練習しています。中には「この歌を歌いたい」と自ら主張するほど、歌への思いを強く持つ子もでてきました。彼らは、歌詞の意味や歌の作者、作った人の平和を願う気持ちが伝わるように歌うことを大切にしています。一人じゃないよ、みんなで頑張っていこうという願いや祈りも歌に込めています。
平和に関する歌以外にも、季節の歌や沖縄のわらべうた、そして流行りの歌も取り入れ、楽しく活動しています。合唱指導は、元天妃小学校教員の高里千穂子先生と、ピアノの長嶺先生が担当しています。
【年間を通じた主な活動】
6月23日(慰霊の日)
沖縄県が主催する沖縄全戦没者追悼式で歌唱します。約5000人規模の人々の前で、12時頃から献花の間の17分から18分ほど歌います。合唱団がこの追悼式で歌うのは5、6年目になります。
8月22日(対馬丸撃沈日)
那覇市若狭にある対馬丸の慰霊碑「小桜の塔」前で行われる慰霊祭で歌唱します。小桜の塔の前には大きなテントが張られ、遺族など多くの参列者が集まる中で、「海の子守唄」など約7曲を歌います。かつては500人ほどが集まりましたが、最近は減少傾向で400人ほどになっています。
10月初旬(那覇市戦没者追悼式)
毎年10月の初旬には、那覇市戦没者追悼式が若狭のなぐやけの碑前で行われ、合唱団も毎年参加しています。
こどもの日のこいのぼり掲揚式
これは、対馬丸で犠牲となった多くの子どもたち、特に自分たちと同じ年の子どもたちの夢や希望を忘れないように、そして今を生きる自分たちがその分頑張って生きて、平和を伝えていくという強い思いが込められています。
対馬丸記念館や関連行事で、子どもたちの活動に触れてみてください。
平和学習への取り組み
特定の時期だけでなく、年中平和学習を実施している対馬丸記念館で活動する合唱団の活動は、歌を通して平和の尊さを学ぶ重要な機会となっているようです。
なんみん祭のあとには、学芸員の方の案内で近隣の慰霊碑を見学し、10・10空襲など歴史についても学んでいます。大学関係者などを講師に招いて平和学習を行うこともあります。体験を通じて学ぶことを重視し、多角的な平和学習を通じて、子どもたちは自然と平和を意識できるようになっているそうです。
合唱団の意義と子どもたちの成長
つしま丸児童合唱団の活動は、対馬丸事件の記憶を風化させずに語り継ぎ、犠牲になった子どもたちの無念や、叶えられなかった夢や希望を、今を生きる子どもたちが受け継いでいくための大切な取り組みです。子どもたちは、歌を通じて平和のメッセージを伝えるだけでなく、自らが平和について考え、発信する力を身につけていきます。
記念館は子どもたちにとって、ただ歌を練習する場所ではなく、自己を表現し、安心して過ごせる大切な「居場所」となっています。学年や学校が違っても、子どもたちは楽しく仲良く活動しています。
年間を通して多くの行事や学習があり忙しい日々ですが、3月の年度末にはハロウィンやクリスマスパーティーといったお楽しみの行事もあるそうです♪
地域との連携強化
2025年からは、地域との連携をより深めるため、「対馬丸合唱団育成会」がスタートし、毎月第一土曜日には地域の皆さんと一緒に歌う活動もはじました!
団員募集について
つしま丸児童合唱団では、随時新しい団員を募集しています。
那覇市内外の小学1年生から6年生までのお子さんが対象です。
興味をお持ちの方は、ぜひ一度体験に参加してみてはいかがでしょうか。詳細については、対馬丸記念館に直接お問い合わせください。
対馬丸記念館について
太平洋戦争中に沖縄の民間人や子どもたちが多数犠牲となった「対馬丸事件」の記憶を伝えるために開館された施設。
那覇空港からほど近い「波の上ビーチ」の側に静かにたたずむ2階建ての建物は、対馬丸への乗船をイメージした構造になっています。
館内では「子どもと戦争」に焦点をあてた展示を行っており、事件の全容、犠牲者の氏名、生存者や遺族の証言、当時の学校教室や船倉ベッドの復元、犠牲者の遺影・遺品などを見ることができます。
記念館の建つ那覇市旭ヶ丘公園には、対馬丸犠牲者の慰霊碑「小桜の塔」や、対馬丸以外に沖縄県出身者が乗船して撃沈された船舶の慰霊碑「海鳴りの像」も設置されています。
6月14日に開催するネパール献血者協会の献血啓発活動の際に、合唱団の皆さんが歌いにきてくれることになりました!
ぜひ、応援にきてください。
献血啓発活動
日時:6月14日(土)10時〜11時
場所:パレットくもじ前
次号広報わかさmusubuで特集記事を現在作成中です。
お楽しみに!(sato)