2021年12月24日金曜日

「公助×共助」防災専門家・行政で話し合う

12月20日、なは市民活動支援センターで「なは防災キャンプ'21 秋 シンポジウム 〜地域防災『公助×共助』ベストの方程式を考える〜」が、災害プラットフォームおきなわ主催、若狭公民館共催で開催されました。

自然災害が多発する昨今において、被害を最小限に抑える為には、自助・共助・公助の連携が不可欠です。

今回のシンポジウムは、地域住民が互いに助け合う「共助」と公的機関が救助活動や物資などを支援する「公助」がどう連携すべきかを考え、また、そのために平常時から取り組むべきことについて話し合うために開催されました。



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「なは防災キャンプ'21 秋 防災シンポジウム 〜地域防災『公助×共助』ベストの方程式を考える」

第1部 基調報告・避難所検証・地区防災計画実践

稲垣 暁 氏(一般社団法人災害プラットフォームおきなわ共同代表) 


第2部 パネルディスカッション「地域防災『公助×共助』ベストの方程式は何か?」

【論点1】「公助」あっての「共助」では?行政と地域の関わりで「公助」と「共助」はどうかみあうべきか?

【論点2】地域の防災資源や拠点を再評価・リフレーミングする必要があるのではないか?

【論点3】早期解決が必要!国が求める「地域での安全な場所確保」と「物資/情報支援」をどうしたらよいか?


パネリスト

稲垣 暁 氏(災害プラットフォームおきなわ共同代表)

渡嘉敷 洋美 氏(那覇市まちづくり協働推進課主幹) 

李 仁鉄 氏(にいがた災害ボランティアネットワーク理事長) 

屋良 剛 氏(那覇市防災危機管理課課長) 

前原 土武 氏(災害NGO結代表) 

小濱 裕子 氏(那覇市公園管理課主査) 

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参加者に配布した資料(レジュメ)を共有します。


まず、はじめに稲垣 暁 氏(災害プラットフォームおきなわ共同代表)より基調報告がありました。


第1部 基調報告・避難所検証・地区防災計画実践:稲垣 暁 氏

稲垣 暁 氏(災害プラットフォームおきなわ共同代表)

「公助や共助」という言葉は、阪神淡路大震災をキッカケに使われるようになってきました。

当時新聞記者だった稲垣さんも実際に阪神淡路大震災の現地で被災していたのですが、着の身着のままで周りの地域住民を救助した過去をお話してくださいました。

その住民同士の助け合い、救助活動が「共助」という言葉として広まっていったそうです。

・消防署も被災しており消防隊や消防車が来なかった。住民同士でバケツリレーを行い消火活動を行った。

・災害時に学校校舎の鍵が閉まっており、避難ができない状況があった。

・災害時に誰が避難所を運営するかが決まってなかった。

災害時の「公助」の準備が整っていなかったという課題が見えてきたとお話してくれました。




休憩時間には参加者の意見(「公助」と「共助」どう考える?)なども張り出しました。
時間の都合上、パネルディスカッションでは全てを紹介することができませんでしたので、こちらで共有します。イラストや図を用いてわかりやすく表現されているものもありましたので、そのまま掲載しています。(一部見えにくいものもあります。ご了承ください。)

参加者意見:「公助」と「共助」どう考える?









第2部では地域防災『公助×共助』のベストの方程式について話し合いが行われました。

■パネリストの紹介■

稲垣 暁 氏(災害プラットフォームおきなわ共同代表)


渡嘉敷 洋美 氏(那覇市まちづくり協働推進課主幹)


ボランティアのマッチングや那覇市のそれぞれの課からの情報を集めて、必要情報を市民と繋ぐの窓口業務としての役割も果たしている「まちづくり協働推進課」が入居している「なは市民協働プラザ」は、災害時の指定避難所として設置されています。

李 仁鉄 氏(にいがた災害ボランティアネットワーク理事長) 

2004年に新潟中越沖地震の前の新潟の水害の時に被災した李さん。その被災した時のボランティア経験を活かして、新潟中越沖地震の際にボランティアセンターで活動したことをきっかけに、いつのまにかボランティアセンター設置のプロフェッショナルとなり、今では全国各地の被災地で活躍しています。


屋良 剛 氏(那覇市防災危機管理課課長) 


令和3年度から那覇市防災危機管理課の課長に就任した屋良さん。それまでは消防の救助隊として30年間活躍していました。災害が起きたら一番最初に災害対策についての判断をしないといけない立場です。防災危機管理課に配置される前に、内閣府の防災担当部署にて3ヶ月間勉強したそうです。

前原 土武 氏(災害NGO結代表) 

沖縄出身で、ラフティングで世界を旅しており、東京で添乗員で働いていた土武さん。東日本大震災をキッカケに災害支援のコーディネーターとして被災地で地域や行政の方々と一緒に活動しています。


小濱 裕子 氏(那覇市公園管理課主査) 


普段は公園の活用や美化活動の業務をしている小濱さん。防災キャンプの取り組みに実際に参加して、防災が公園にどう活かしていけるかを考えています。



第2部のパネルディスカッションは稲垣 暁 氏(災害プラットフォームおきなわ共同代表)が
ファシリテーターで論点にそって話をまとめてくださいました。


【論点1】 「公助」あっての「共助」では?行政と地域の関わりで「公助」と「共助」はどうかみあうべきか?
〜避難所運営での「国」「自治体」「地域」の視点のズレをどうする?〜

防災士の教本や自主防災組織の手引きでも地域で避難所運営をしましょうと記載されているが、避難所運営のノウハウがなかったり、地域の方に情報が届いていなかったりとわからないことが多い。
このギャップについてそれぞれの立場から意見を述べていく。

稲垣 暁 氏(災害プラットフォームおきなわ共同代表)
・避難所運営のマニュアルなどは自主防災組織のような地域住民と行政職員が一緒に作成していくのが理想。
・「公助」と「共助」の接点を作っていくことで、顔見知りを作ることが大切。

渡嘉敷 洋美 氏(那覇市まちづくり協働推進課主幹)
・避難所運営に関しての不安がある。
・行政だけが対応していくには限界がある。
・イザ!避難所開設した時に普段施設では活動していない本庁職員が派遣され、対応マニュアルもなし、コロナ対策もなしでこれからどうしていけばいいのか市役所職員でも不安なので、地域住民はもっと不安になると思う。
・地域住民の力をもっと借りることができるような話し合いの場が必要。
・普段の防災訓練がいつもと同じ自治会の役員だけということがあった。多世代の方々に参加してもらいたいがそのような場を作ることはとても難しい。

屋良 剛 氏(那覇市防災危機管理課課長)
・台風の際にはあらかじめ避難所開設の準備を行い運営対応をしている。
・地震などの大震災の場合は地域の83ヶ所(小中学校も含む)の近くに住む職員を現場へ派遣する予定だが、行政だけで全て運営するのは難しい。
・短期的(2~3日)な避難所運営は行政職員だけで完結できるが、長期になればなるほど、地域の自主防災組織の力が必要になってくるが、今はそのマニュアルの作成をしている最中。

李 仁鉄 氏(にいがた災害ボランティアネットワーク理事長)
・災害時のチェックリスト(電気は点いているか、備蓄はあるか、命を守るルール作り)などの作成は必要だかマニュアル(災害後どのように対応していくか指針に従った行動内容)はきっちりルールを作ってしまうとマニュアル以外のことができない場合があるので作成には注意が必要。
・ガイドライン(指針や指標、方向性)を作成する場合は避難所での共通の目標を定めるといい(災害復興までのビジョンを共有する)。
・チェックリスト・マニュアル・ガイドラインも作成する場合は行政だけで決めず、地域住民と話し合いながら、お互いに擦り合わせて歩み寄ることが必要。
・市民ができること(運搬や清掃、仕分けなど)・行政職員ができること(り災証明書、被災証明書の発行など)をお互いの立場を話し合うことが必要。
・キーワードは「納得」。行政・地域住民がお互いの状況を理解していくことが必要。
・社会福祉協議会がどのように日頃動いているか、どのような理念で動いているかで災害時に現場が大きく変わっている。

前原 土武 氏(災害NGO結代表) 
・行政と住民だけでは、すり合わせることは難しい。中和剤のような第三者(よそ者/NPO)の関与が必要になってくる。
・成功体験を一緒に体験すると連携がグッと深まる。(小さな連携の成功がより強い連携を構築していく)
・避難訓練をする場合は復興までを想定するべき。(避難所は行く場所ではなく、帰る場所になることを理解する)


論点2】地域の防災資源や拠点を再評価・リフレーミングする必要があるのではないか?
〜公園のポジション/災害時の学校に期待される役割/社会福祉協議会の役割と災害ボランティアセンターなど〜

公園は電線がなく延焼被害の可能性も低いと考える。さらに備蓄や貯水などの、災害時の一時的な避難生活をする資源もあることから、公園を避難場所として再認識する。災害時の学校の役割(児童の安全の確保をしながら、避難所運営をどうするか)や社会福祉協議会(福祉の専門性を活かして関わる)の役割も再確認する。


小濱 裕子 氏(那覇市公園管理課主査)
・公園管理者が「公助」としてどのような関わりを持つことができるかを平時から考える必要がある。
・「防災キャンプ」のような防災訓練に参加して社協やNPOなどの方と顔見知りになり、行政との連携をシュミレーションすることが災害時に大きな役割を果たす。
・公園には貯水槽や備蓄倉庫などもあるので、避難所の一つとして課題などを住民と解決していければ。

前原 土武 氏(災害NGO結代表)
・高齢者や障がい者、児童などを資源として捉える目線もあるのではないか。
例えば、小さい子もいるだけでみんなの癒しとなる。力仕事をする方を募集するだけではなく、避難所にいる方それぞれに役割を与える。
・社会福祉協議会やNPOの方々が日頃の付き合いで避難所の役割を見つけることができるのではないか。
・地域の方々も役割をこなしていくと、自信につながり、積極的な支援につながっていく。


学校と地域の連携構築について参加者からご意見を頂きました。

平得 永太郎 氏(銘苅小学校区まちづくり協議会)

・学校と地域と企業と共に美化活動を続けており、その中で生まれた繋がりが災害時に役立つと考えている。
・学校は学校長がどのような想いで活動しているかで大きく変わる。
・学校と地域との繋がりを今後とも深めていきたい。


【論点3】早期解決が必要!国が求める「地域での安全な場所確保」と「物資/情報支援」をどうしたらよいか?
〜避難所不足に対し、民間地/自動車/在宅避難者の支援、物資配布ルールづくり、オンライン活用/制度や専門にとらわれない「サードプレイス」〜

絶対的な避難所不足に対応するため、子ども食堂や集会所など普段避難所に指定されていない場所が災害時に避難所として活用される可能性を考える。その時に避難所にこ来れない行かない者たちとどう連携をとることができるかを話し合う。
その際に公助の制度や情報を共有して、解決策を見つける。


李 仁鉄 氏(にいがた災害ボランティアネットワーク理事長)
・自主防災組織を各自治体に作る動きなどがあるが、地域によっては既にある団体に防災の機能をもってもらうような柔軟性が必要。
・市役所のOBや地方だとお寺の住職さんの奥さんなどが行政と住民のクッション役を果たすことができるだろう。
・「日々の防災訓練は成功をしたら、失敗」ということを覚えておいてほしい。失敗をしないと検証する課題などが見つからない。

公園が避難所となった場合に設置されるマンホールトイレについて参加者から意見を頂きました。


平田 徹 氏 (那覇市上下水道局 下水道課 技査)

・マンホールトイレは新都心公園に30ヶ所あるが全ての公園にはマンホールトイレは整備されていない。
・マンホールトイレは不法投棄の懸念があり普段は鍵をかけている。
・鍵が2ヶ所あるが、防災危機管理課と新都心公園内の緑化センターが所持している鍵がないとマンホールトイレは設置することができない。
・職員が到着するのを待つのではなく、住民だけでマンホールトイレを設置できる体制が必要。


屋良 剛 氏(那覇市防災危機管理課課長)
・防災訓練はやらないとできない・わからないということが多い。やってこその防災となると考えている。
・公的立場である私たちが地域住民とコミュケーションをとり、お互いの弱み・強みを理解していくことが必要。
・施設や備蓄などの整備や準備は行政が行っていくが、地域や市民には心の備えの必要性を伝えていきたい。
・顔が見える関係を構築するため、住民・行政の垣根を越えて日頃から防災訓練のイベントなどに参加し交流していきたい。


最後に県外講師の方々からのメッセージ

前原 土武 氏(災害NGO結代表)

・「受援力(信じる力)」を身につけてほしい。信じきれない人たちでは連携を構築することはできない。平時にできないことは急時でもできない。日頃から信頼関係を築くことが災害時に役立つだろう。


李 仁鉄 氏(にいがた災害ボランティアネットワーク理事長)

・「公助×共助」を実現するためには、住民は普段の生活で行っている作業(掃除・荷物運搬等)を行い、行政は必要な備品や物資などを調達してくるなどの環境整備を行う。というような役割分担の整理が必要になってくるだろう。マニュアルやルールなどは、イザというときにルールを変える必要が出てくる可能性がある。その際のルールの変更の仕方なども事前に話しておくことが大切。



最後に災害プラットフォームおきなわ共同代表の有村博勝氏より閉会の挨拶を兼ねてコメントをいただきました。

有村 博勝 氏(災害プラットフォームおきなわ共同代表)

・「公助×共助」という言葉があるが、その前に災害時は人びとが助け合わなければ生きていけない状況になるということを理解してほしい。
・公助と共助には垣根はない、お互いを助け合わなければ人は救えない。


今回防災の専門家・行政・地域の方々からそれぞれの目線の意見を伺い、共有できたことは今後に繋がるキッカケになったと感じています。
今後も意見交換の場を定期的に設けて、平時から繋がる関係性作りをおこなっていきたいと思います。

(崎枝)


主催:一般社団法人災害プラットフォームおきなわ / 那覇市若狭公民館 / NPO法人地域サポートわかさ
協力:那覇市(防災危機管理課・公園管理課・まちづくり協働推進課・上下水道局) 人も犬も猫も幸せなまち創り隊OKINAWA
助成:沖縄しまたて協会