ラベル 教育協働アカデミー の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 教育協働アカデミー の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2025年8月8日金曜日

教育協働アカデミー第2弾|島根県益田市のコミュニティスクールと地域づくりの実際

8月5日、那覇市若狭公民館で「沖縄教育協働アカデミー8月例会」が開催されました。
沖縄教育協働アカデミーと共催で事業を実施するのは、6月に続いて2度目となります。



開催概要


• 日時: 2025年8月5日(火)16:30〜18:20
• 会場: 那覇市若狭公民館 第1研修室
• 主催: 沖縄教育協働アカデミー
• 共催: 那覇市若狭公民館
• ゲスト: 谷上 元織氏(島根県益田市立戸田小学校 教頭)
• 進行: 南 信乃介氏(NPO法人1万人井戸端会議 代表理事/那覇市繁多川公民館 館長)
• コメンテーター: 井上 講四氏(教育協働研究所「岳陽舎」主宰)

谷上 元織氏 プロフィール: 
島根県益田市立戸田小学校教頭。益田市において派遣社会教育主事として「ひとづくり」事業を担当。教員同士の学び合いの場「教師の元気が出る会」を主催。島根大学社会教育主事講習の講師も務める。


趣旨


今回は、島根県益田市が掲げる「ひとが育つまち益田」というキャッチコピーのもと、「ひとづくり」を市の施策の中心に据え、ライフキャリア教育やコミュニティスクール、地域づくりに取り組むその実践について学ぶことを目的としています。
ゲストスピーカーは、島根県益田市立戸田小学校教頭であり、益田市の「ひとづくり」事業において派遣社会教育主事を務めてきた谷上元織さん。谷上さんは、教員同士の学び合いの場「教師の元気が出る会」を主催し、島根大学社会教育主事講習の講師も務めるなど、多岐にわたる活動を展開しています。

益田市の教育改革における主要テーマ


谷上さんの講話と参加者との質疑応答から、益田市の教育改革におけるいくつかの主要なテーマが浮かび上がってきます。


「ひとづくり」と「人間関係」の重要性

益田市の教育改革の根幹には、「ひとづくり」への強いコミットメントがあります。谷上さんは、故郷や大切にしたい土地という気持ちは「良き人々との繋がり」によって生まれると強調し、「人は皆幸せに生活することが一番大事であり、その中で学び、成長し、力を発揮するためには、良き人間関係が不可欠である」という信念を述べています。ハーバード大学の研究やGoogleの心理的安全性の研究を引用し、「人間関係こそが全てのパフォーマンスの源泉であり、人生を豊かにする」と力説している点は、益田市の「ひとづくり」が人間関係の質を重視していることを明確に示しています。


社会教育を基盤とした「関係性の耕し」


谷上さんは人間関係を「社会の基盤」、「ソフト面のインフラ」と表現し、その重要性を強調しています。このインフラは「与えられた場所で咲く」だけでなく、「関係性を耕し続ける」ことで構築されると述べています。関係性を育むための条件として、以下の5点を挙げています。

  • 受容: 受け入れられること。
  • 協働: 共に創ること。
  • 挑戦:挑戦をする環境、余白がある。
  • 試行錯誤:試行錯誤をしても咎められない。
  • 愉しさ: 活動自体が楽しいこと。


これらの要素をつなぐものとして、「対話」が非常に重要であると強調しており、システムや仕組み作りだけでは達成できないと述べています。

 

教員の「安心・安全」な環境づくりと主体性の尊重


谷上さんは教頭として、教員の「安心・安全」な環境づくりに注力しています。自身の役割を「学校や地域を含めた文化を醸成する要」と捉え、職員が「一番相談しやすい」と感じられる存在であることを目指しています。具体的な取り組みとして、以下の点が挙げられます。


  • 上機嫌でいること: 「笑顔は顔の筋トレ」と意識し、良い空気を醸成。
  • 苦手の開示: 自身の不完全さを隠さず、開示することで、職員が本音を話しやすい雰囲気を作る。
  • 主体性の尊重: 「普通はこうだろう」という言葉を使わず、一人ひとりの主体性を尊重。
  • 感謝と承認: 相談があれば「ありがとう」「いいね」と肯定的に応じる。
  • 「我々」という言葉の使用: 困り事に対して「俺らどうしようか」と、共に解決する姿勢を示す。
  • 雑談の活用: 関係性構築のために、業務に関係ない雑談を積極的に行う。


これらの姿勢が、職員の「安心・安全」な環境を生み出し、挑戦や試行錯誤を促していると述べています。


「教師の元気が出る会」に代表される教員同士の学び合いの場


谷上さんが主催する「教師の元気が出る会」は、教員の元気を生み出すための具体的な取り組みの一つです。当初は職員室の延長のような場を目指しましたが、現在は先生方だけでなく教育に関心のある誰でも参加できる開かれた場となり、様々な「化学変化」が生まれているそうです。この会から、若手教員が自発的に子ども向けスポーツ活動や教科の勉強会を企画するなど、「勝手に作り始める」姿が見られると報告されています。谷上さんは、こうした活動を強制せず、「勝手にやってほしい」「どんな感じだったか教えてほしい」というスタンスで主体性を尊重しています。

また、「モチヨルmorning」という、ただ一緒に朝食を食べる(若狭公民館の「朝食会」のような)場も開催されており、ここから「コミュニティ居酒屋」のような企画が生まれ、教員が料理の腕を振るい、エネルギーを発散する「安心安全の場」となっています。


地域と学校の協働実践と「社会教育コーディネーター」制度


益田市では、地域と学校の協働を重視しており、コミュニティスクールもその一環として推進されています。谷上さんは、地域に赴任した教員が地域と連携する上では、日々の「対話」の重要性を強調しています。

  • 子どもたちの変容の共有: 子どもたちの姿を話題に雑談する中で、地域との交流が子どもたちの変容に繋がることを細かく伝え、その価値付けを行う。
  • 既存の教育課程と地域連携を一体化させるマネジメント: 学校の教育課程やカリキュラムを工夫し、一つの取り組みが複数の目標(例:地域学習と教科の学習)を同時に満たす仕組みを考えることで、教員の負担を軽減し、地域連携を促進。
  • 運営協議会での「対話」重視: 学校協議会において、職員と委員が「安心安全の場」で対話を行うことを重視し、「子どもたちに体験させたいこと」や「地域に必要なこと」を出し合う場とすることで、共に創り上げる意識を高めている。
  • 柔軟な運営: 学校運営協議会を柔軟に運用するため、一部の活動については会議を経ずに有志による「ミニ作戦会議」で決定し、後で報告する仕組みを導入。これにより、地域の人が主体的に企画・実行する機会が増え、当事者意識が高まる事例も紹介されています。
  • 課題とニーズの重ね合わせ: 学校の課題(例:草取りの負担)と地域のニーズ(例:地域の繋がりを耕したい)を重ね合わせることで、「課題がハッピーな活動になる」事例も生まれている。
  • 活動の場で重視する要素: 活動の場では、「やってみたいが実現できる」「困りごとを発信できる」「共通体験を共有できる」「大人がシンデ(困っている子ども)のために集まる」といった要素を重視。


益田市には「社会教育コーディネーター」という制度があり、学校内に席を置き、教育活動のサポートや地域との橋渡し役を担っています。谷上さんは、コミュニティスクールはあくまで「制度」であり、大切なのは「スクールコミュニティ」を通じて「文化を醸成する」ことだと強調しています。

 

地域基盤が弱い場合の連携と「草の根」活動の重要性


地域基盤が弱い場合の連携については、谷上さんは「積み重ね」が必要であるとし、コーディネート役がいる場合、まずは「できるところからやる」ことが大切だと述べています。小さな活動や小さな繋がりでも、それらを「掘り起こし、認めていく」ことの重要性を強調しています。学校運営協議会の制度にこだわりすぎず、実際に活動する人々(実動する皆さん)を大切にし、有志での集まりから掘り起こしていく姿勢が示されています。

時には教頭という立場を超え、「地域のおっさん」として飲みながら話をする中で「何かしたい」という声を聞き、「じゃあ作っちゃえよ」「サポートするから」と背中を押すなど、草の根的な活動を「見える化」し、表舞台に上げていくことで、緩やかな繋がりが大きなチームに発展する可能性があり、結果的に動き出しが早くなると述べています。


結論と示唆


益田市の教育改革は、「ひとづくり」を核に、人間関係の質を高めることを重視したユニークなアプローチを展開しています。特に、谷上さんのような現場の実践者が、教員の働き方改革や地域連携といった課題に対し、対話と「安心・安全」な場づくりを通じて、教員と地域住民の主体性を引き出し、自発的な活動を促している点が注目されます。

那覇市ではどのような取り組みが必要とされているのか、学校や地域、多様な主体と「対話」を通じて見出していきたいです。







おまけ

開始前の谷上さんと井上講四先生


2025年7月25日金曜日

沖縄教育協働アカデミーとの共催|第2弾

元琉球大学教授・井上講四先生を中心に、県内で活動する社会教育関係者による意見交換や勉強会を毎月実施している「沖縄教育協働アカデミー」。
8月例会は、若狭公民館と共催で実施することになりました。

今回は、島根県益田市立戸田小学校教頭の谷上元織先生をお迎えして「島根県益田市のコミュニティスクールと地域づくりの実際」をテーマに語り合います。

谷上氏は、市の施策の中心に「ひとづくり」を据えて取り組む益田市のひとづくり事業に長年関わってきたほか、教員同士の学び合いの場「教師の元気が出る会」を主催するなど、公私共にひとづくり・地域づくりに取り組んでおられます。

益田市のコミュニティスクールや地域学校協働活動の取り組みについてお話を伺った後、意見交換を行います。





沖縄教育協働アカデミー6月例会/那覇市若狭公民館 成人講座
『島根県益田市のコミュニティスクールと地域づくりの実際』

日時:8月5日(火)16:30-18:00
会場:若狭公民館 第1研修室
参加費:無料
申込:不要
※直接ご来場ください。

[オンライン参加]
Zoom


ミーティング ID: 820 6676 5328
パスコード: Gakuyou17

※当日のネット接続状況や運営体制によって、トラブル等が発生する可能性があります。
 予めご了承ください。


沖縄教育協働アカデミー|第1弾「中国・四国・九州地区生涯学習実践交流会 報告会」

6月3日、沖縄教育協働アカデミーとの共催で、「中国・四国・九州地区生涯学習実践交流会」の報告会を開催しました。

5月に福岡県立社会教育総合センターにて開催された交流会に沖縄から参加した3名の方からその報告を伺うという会でした。

報告者は、山崎新さん(国場児童館館長・玉城青少年の家指定管理者)、大城喜江子さん(森の子児童センター館長/中国・四国・九州地区生涯学習実践研究交流会 沖縄県世話人)、御園楓さん(繁多川公民館職員)。
コーディネーターは、沖縄教育協働アカデミーの世話人・井上講四先生(元琉球大学教授・教育協働研究所「岳陽舎」主宰)。





井上先生の開会宣言で会はスタート。
沖縄教育協働アカデミーの月例会と、福岡で開催された「中国・四国・九州地区生涯学習実践研究交流会」の報告会を兼ねての開催である旨が告げられました。

報告会ではまず、5月17日(土)・18日(日)に福岡県立社会教育総合センターで開催された第42回大会の全体像が紹介されました。

この大会は、福岡県教育委員会と日本生涯教育学会九州支部が主催し、中国・四国・九州地区生涯教育実践研究交流会 第42回大会実行委員会が主管を務めています。


大会のテーマは、「人づくり」こそが未来を創る~「現代教育の忘れもの」を問う~。

SDGsが掲げる「持続可能な地域づくり」の実現には、「人づくり=教育」が鍵であるという認識のもと、子どもたちの不登校やいじめ、自殺の増加といった深刻な現状に警鐘を鳴らし、約40年前の「青少年教育キャンプ」の理念『現代教育の忘れもの』を改めて問い直すことが強調されました。


今年の大会には、25都府県から約370名が参加し、その半数近くが行政関係者であったことが特筆されました。

参加者は全員が手弁当で参加しており、その熱量の高さが大きな特徴です。各県の実行委員からの推薦により、「未来を展望する素材」となる24事例が集まり、実践発表が行われました。


大会は、情報交換会や大会交流会といった交流の場も重視しており、特に「おらがまちの名物自慢」と題した特産品オークションは、次年度の運営費の一部となる重要な収益源となっています。

また、開催地の福岡県立社会教育総合センターが、その運営を担う県職員の当事者としての経験を重視している点も強調されました。



沖縄から参加された3名からは、それぞれが印象に残った事例等についての報告がありました。


・コミュニティ・スクールとPTA活動の可能性
・「子ども食堂」を通じて、地域全体の孤立解消を目指している活動
・「日本一の紙芝居のまち」を目指した取り組みの中で多世代交流と地域づくりに繋げている事例
・子ども主体で地域を動かす子ども会活性化策
・「アンコンシャスバイアス」に気づく平和学習



それぞれの報告の後は、実践事例を踏まえながら、沖縄での地域教育のあり方や、今後の連携等について活発な議論が行われました。


その後の情報交換では、若狭公民館で今年度取り組む「まちづくり部(仮)」についての提案があり、コミュニティスクールや地域学校協働活動について、意見交換が行われました。




内容詳細は、報告会の動画アーカイブがあるので、こちらをご視聴ください。