2013年9月22日日曜日

つながろう!那覇市防災ネットワーク!【報告】

9月1日は「防災の日」でした。
「防災の日」は、防災思想の普及、功労者の表彰、防災訓練等これにふさわしい行事が実施される日として、関東大震災が発生した日にちなんで、9月1日に制定されたそうです。


若狭公民館では、この防災の日にあわせてNPO琉球ニライ大学との共催で、「つながろう!那覇市防災ネットワーク」を開催しました。

趣旨説明をする新里玲王奈学長(琉球ニライ大学)

東日本大震災以降、防災に対する関心が高まり、各機関、地域で様々な取り組みが行われるようになりました。
しかし、それぞれの活動の課題や情報、経験が共有されていない現状があります。
「つながろう!那覇市防災ネットワーク」では、それぞれの取り組みの「見える化」を図ることで、コミュニティ防災活動の基礎づくりを推進し、顔のみえる協力関係をつくっていくためのきっかけづくりを目的としました。

今回、講師を務めていただいたのは、元国際協力機構(JICA)コミュニティ防災能力向上プロジェクト(通称BOSAIプロジェクト)専門家の伊良部秀輔先生。


伊良部秀輔先生

今回は、DIG(ディザスター・イマジネーション・ゲーム)という地図を使ったワークショップをもとに講座を進めました。

DIGでは、まず那覇市の大型地図に、水(海岸線・河川境界・湧き水・井戸・ため池・湖沼)、地(急傾斜地・地震断層)、人(一時避難所・公民館・病院・学校・養護施設・消火栓・公衆電話・防災行政無線等)の情報を記したあと、交通量の多い道路、橋、埋立て地の境界、過去の災害発生地、要援護者の場所を記入していきます。








参加者それぞれが持っている知識や情報を地図に記していったのですが、この中に地域のことをよく知っている方や防災の専門家が加わるとより詳しい情報を記すことができるようになります。

ちなみに、那覇市ではより詳しい情報を掲載した「那覇市防災マップ」をインターネットで公開し閲覧できるようにしています。
講座を実施するにあたり様々な面でご協力いただいた市民防災室の東さんに那覇市防災マップの説明をしていただきました。

「那覇市防災マップ」の説明をする東さん



話し合いながら地図に様々な情報を書き記したあとは、那覇市を5つに分け各地域ごとの特徴について気づいたことを発表していただきました。


◆参加者が発表した地域ごとの特徴
<首里地域>
・急傾斜地が多い
<真和志地域>
・学校が多い
・中心の海抜が低い
・大きい道路に面していない所が多い
<旧那覇地域>
・浸水しやすい川に囲まれている
・埋立て地の割合が多く、高い場所が少ない
・地域住民に高齢者が多く、避難場所が遠い
<曙・安謝・新都心地域>
・海抜2mくらいの低い地域(海、河川に囲まれている)
・高齢者が多い地域
・新都心があるが、国道58号線があり、車での移動は不可
<小禄地域>
・地震に弱い所  漫湖周辺、ガジャンビラ
・津波に弱い所  漫湖周辺、山下町
・大雨に弱い所  漫湖周辺、ガジャンビラ



那覇市の地形や資源等を確認したあとは、シュミレーション(図上でのシナリオ訓練)を行います。

今回想定した内容は下の通りです。

 <立場と進行内容> 
皆さんは「自主防災会」のメンバーです。 
沖縄県南東側琉球海溝沿いで大きな地震が発生しました。大きな被害が出たことは間違いありません。しかし、詳細は不明でマスコミも概略を伝えるのみです。このような状況下、何をすればよいのか、どこから手をつければよいのかを考えなければなりません。ともかく、被災の状況をイメージしないことには、すべてははじまりません。 
自主防災会のメンバーとして、沖縄県が出していた被害想定調査報告書の大まかな情報は把握しています。この情報を手がかりに、想像力を働かせて、「こんなことが起こっているに違いない」「当然、こんなことが考えられる」「こういう対応をとろう」といったことをみんなで議論しながら整理してみましょう。


<想定した現象>海溝型地震(沖縄本島南島沖3連動型)
地震の規模  マグニチュード9.0
震源の深さ  地下10km〜20km
断層の大きさ 幅70km、長さ300km、すべり量20m(東日本大震災の断層は50mのすべり量)
地震発生日時 20XX年9 月1日(月)午後3時30分 / 満潮時頃 


<地震動の観察状況>
(1)那覇市全体で立っていることができない揺れ。固定されていない家具が移動や転倒。ところによっては、固定されていない家具のほとんどが転倒。
(2)屋外をみるとコンクリート塀が崩れているところや、黒煙が立ち上がっているのがみえる。 


<沖縄県が2012年8月及び2013年6月に公表した被害想定調査に基づく想定> 
(1)想定した発生時刻は、被害が最大になると予想される冬場夜ではないが、想定訓練として最大値を使う。 
(2)最大震度は、糸満市で震度6強と発表。本島の大部分で震度6弱。 
(3)沖縄県全体で全壊数約21,000棟、半壊数妬く51,000棟。那覇市で全壊家屋数4,500棟、半壊数約11,000棟。 
(4)沖縄県全体で出荷133件。消失棟数約115棟。那覇市で出火28件、焼失棟数24棟。 
(5)本島中南部の海岸付近などに液状化が発生。 
(6)ライフラインの被害により影響をうけるのは、県全体で断水人口(配水被害による)約1,200,000人、停電戸数約100,000戸、前都市ガス供給停止、電信柱被害数1,400、電話機能支障数(回線)約61,000(全体の約11%)。復旧にかかる日数は、上水道で約88日、電気で約4日、電話機能約5日。最大要応急給水量21,000t/日。那覇市内配水管被害は約1,000箇所、電話機能支障数は約200箇所。 
(7)集中利用による輻輳で一般電話の一時利用困難が発災後2日目まで発生。(公衆電話除く) 
(8)想定される死者数は沖縄県全体で約500人、重傷者約2,900人、軽傷者数約55,000人 
(9)沖縄県全体で、約250,000人の避難所への避難者が発生。

上記の想定のもと、現状とどうするのかを話し合い書き出していきました。
その際、以下の点を考慮して検討していきました。


(1)避難広報:避難の呼びかけを行う 
(2)避難行動:避難する 
(3)避難誘導:避難者を誘導する
(4)避難完了報告:避難完了の報告を行う
(5)避難所設営・運営:避難所を立ち上げ、運営する

【付与状況】
強い揺れにともない、沿岸部及び河川域周辺で液状化発生。(地震発生:午後3時30分)

  1. 3分後の午後3時33分に気象庁から「大津波警報(特別警報)」が発令されました。「巨大」な津波です。27分後に第一波到達予測です。
  2. 9月1日午後4時00分、第一波到達。波は予想よりも低い様子をマスコミが伝えている。
  3. 9月1日午後5時30分、「津波警報」が発令されています。「高い」津波です。強い余震が続いています。
  4. 9月1日午後9時00分、津波警報が解除されました。「津波の心配なし」と発表されています。余震が続いています。沿岸部は、津波と地震それに伴う液状化により家屋被害が多く発生した様子(上記想定参照)。沿岸部の住民は、3日間避難生活を送る必要があります。標高10m以上の地域ではいくつかの場所で土砂崩れ、家屋の倒壊などがみられます。


上記の想定条件の中で、参加者それぞれが自分がいる場所の状況やその都度どのような判断をするのかシュミレーションしていきました。









シュミレーションで話し合った内容をグループごとに、グループの特徴、避難ルートとその理由、発災から72時間までのグループの考えを発表していただきました。

具体的な状況を想定することで、どこから情報を得て、どのように判断するのか、より詳細な状況がイメージできるようなったようです。
また、地震発生時にどこにいたのか、どのような手段で情報を得たのか、なども行動を判断する上で重要な要素となっていました。

様々な状況の重なりの中で、行動も変わってくるはずなので、「正解」があるわけではないと思うのですが、このようなシュミレーションを繰り返し行うことで、実際に災害があったときの判断や行動が早くなるように思います。


各グループの発表でDIGを終了したあと、関係機関や参加者から事例紹介をしていただきました。
事例紹介では、現在の活動状況、自慢の点・成功例、課題、新しい取り組みについてお話しいただきました。


最初に発表していただいたのは、那覇西消防署です。
那覇西消防署からお二人参加していただいたのですが、DIGではグループの中に入るのではなく、専門的な情報を知りたいときにアドバイスをするような形で関わっていただきました。

事例紹介では、DIGの講評と専門的な立場からアドバイスをいただきました。
また、地震・津波だけではなく、台風による被害と対策についてもお話いただきました。




那覇西消防署からの講評

続いて、若狭地域の取り組みについて、若狭二丁目自治会の上原会長にお話しいただきました。

国道58号線より西側の地域には、3つのネットワーク組織があり、それぞれの取り組みを紹介していただいたほか、若狭二丁目自治会の取り組みとして、地域にある3階建て、4階建ての家のオーナーに対して緊急時避難に使わせてほしいという依頼をしていることなどを報告していただきました。


若狭地域の取り組みを紹介する上原会長(若狭二丁目自治会)


続いて、那覇市社会福祉協議会の取り組みについて、高野さん(那覇市社会福祉協議会)に紹介していただきました。

今年は、高齢者等の要援護者に対する支援のあり方や災害時におけるボランティアセンターの立ち上げと運営について、とくに力を入れているということでした。


那覇社協の取り組みを紹介する高野さん


3番目の事例紹介は、繁多川公民館の取り組みです。
昨年度開催した「2000人でシンメーナービ」の事業を記録映像を交えて紹介していただきました。
繁多川公民館は立地的に高台にあり、地震や津波が起こった際には避難場所となることが想定されるので、避難者を受入れることを想定したより実践的な取り組みを行っています。
この事業を中心となって企画した南さん(なはまちづくりネット/繁多川公民館一部業務受託団体)に、報告していただきました。



活動紹介をする南さん(なはまちづくりネット)

南さんの事例紹介は、下の映像をみながら行いました。
「2000人でシンメーナービで豚汁を」(3分35秒)


最後は、那覇市市民防災室の金城室長から、主に若狭地域の状況、課題についてお話しいただきました。
若狭地域は、地震、津波、大雨、高潮など各種自然災害に弱い地域であるということに加え、住民の構成も約23%が高齢者で、災害時の自助、共助を行う力も弱い。地域からの要望もあり、避難ビルの協定を結ぶ努力をした結果、2ヶ月間で避難ビルを倍まで増やすことができたが、もし災害が起こった場合、その避難ビルまで避難者を連れて行くことができないという現状があり、それが若狭地域の課題である、ということでした。
那覇市内すべてが少子高齢化で、地域のコミュニティが希薄になっている現状があるが、それを逆手にとって「防災」をテーマにしながら、コミュニティづくりを行うこともできるのではないか、そこから若い人に関わってもらう方策を考えるのも一つの手ではないか、と言う提案もありました。

地域の課題についてお話しする金城室長(市民防災室)


金城室長からの提案もあり、
「より多くの住民に地域の防災活動を理解してもらいたい、若い人を地域防災に関わってもらうためにはどうすればいいか」
ということについて、参加者全員で考えました。

講座ではグループごとに発表したのですが、ひとつひとつのアイディアをより多くの人と共有できるようにこのブログに掲載します。


以下が、参加者からの提案です。



より多くの住民に地域の防災活動を理解してもらいたい。参加してもらうためのアイディア


  • 各団体を通して呼びかけ・ 防災・防犯という意識で取り組みをさせる。
  • 連携の強化
  • 防災単独ではなく、防犯も含めた取り組みを考える。
  • 学校に連絡をして、協力を要請する。
  • 教員、子どもを巻き込んで大人を動かす。
  • 学校や企業を通して呼びかけ。
  • 中学生、高校生へアタックする。
  • 旗頭をやっている方を取り入れて指導をする。
  • 防犯パトロール、サークル活動のグループにちょっとした防災の話する。
  • 首里の場合、自治会ごとに公民館があり活動を行っているので、自治会、青年会を中心にキーマンを育成し、市民によびかけていく。
  • 小学校に月1回で授業に入れてもらう。参観日に入れて大人にも取り組みを促す。
  • 地域の中学生を避難活動の担い手として活用する。
  • 楽しそう!ワクワクするというイベントを通して。
  • 授業参観のように、土日に大人を巻き込んで、親子で防災ワークショップ実践まで。
  • 子どもと親が一緒になって、地域を知る教育やイベントが必要かな?
  • 若者が住みやすい地域にする。(家賃・土地が安い!、病院・学校・保育園がある、スーパーがある!)
  • 青年会・子ども会・自治会 防災の視点で何か楽しいことをやる。
  • シンメーナービor BBQセットを買って9月1日当たりにパーティーをする。
  • 中学生がお年寄りを避難させる訓練をする。
  • 自治会活動に若人を参加させること。
  • 地域の高齢者へ声かけを行っている。
  • ゆんたく会を開き、高齢者が集っている。
  • エイサーで若者を集めて地域を活性化させたい。
  • 小学校の生涯学習の時間に地域にあった防災の取り組みや地域への関わり方を伝え、実践する。
  • ふだんの声かけ。
  • 児童を抱えるPTAを企画に巻き込んで20〜40代の人と講座や訓練を行う。
  • 大学・高校・中学のクラブとの連携。まず参加できるもので。
  • 地域の危険箇所(成人式)要因知ってもらい弱点を克服する参加(地域活動)
  • 繁多川のように楽しみながら実体験できる取り組み、地域の資源を確認できる活動はよいと思った。
  • スポーツ大会。運動会的な賞品をつけて
  • 中・高の同窓会。←まず参加してもらい、その中に少しずつ入れていく。
  • 意識の高い子は多い(いる)。情報の提供が大切ではないか。知らないから動けないのではないか。
  • 大学との連携、ゼミ。←ボランティアをすると就職に有利とつる。
  • サークルとコラボ。ダンス・バンドなど、若者は披露する場。人集めはこちらが担う。
  • 大学・高校・中学との連携。まず参加できるもので。
  • まつりの中で防災についてふれる。
  • 学校で、高齢者から子どもまで多くの世代が集まれるイベントを開く。
  •  月1回BBQかパーティー。日頃から顔なじみになっていないと、いざと言うとき機能しない。(「あしびなー」の文化活用縁日)
  • 上下関係が足かせになっているので楽しい遊びの要素を取り込んで。
  • 観光防災という切り口で地域の観光産業と連携することで企業の若者を取り込む。
  • 青年会(旗頭保存会・那覇中・商業高校生の呼びかけ等
  • 大学・高校の教師をどう取り込むかで決まる。単位にカウント(ゼミ)。
  • マスコミの活用で参加を促す

その後、伊良部先生から中米のコミュニティ防災の取り組みについてもご紹介いただきました。
沖縄で地域防災の取り組みを行う際、中米の事例からヒントになることもあるのではないか、ということでいくつかの事例を発表していただきました。


中米の事例を紹介する伊良部先生

伊良部先生をはじめ、琉球ニライ大学、那覇市市民防災室、那覇西消防署、那覇市社会福祉協議会、ほか参加者や参加団体の皆さまのおかげで、たいへん実り多い充実した講座を実施することができました。ありがとうございました。
しかし、このような取り組みは継続的に繰り返し行わなないといけません。これをきっかけに、今後も地域の防災意識を高める取り組みを続け、そのなかでより多くの人とつながっていけるようにしたいと考えています。

尚、「つながろう!那覇市防災ネットワーク!」の様子は、YouTubeにアップして多くの方と共有できるようにしています。下に動画を貼付けますので、関心のある方はご覧ください。



上の「つながろう!那覇市防災ネットワーク!」動画は、講座の様子を短く切って撮影したものが順に再生されます。
21の動画からできています。内容は下の通り。

  • #1 オープニング〜挨拶
  • #2 趣旨説明
  • #3 講師自己紹介
  • #4 DIGの説明
  • #5 DIG開始(水の情報を記入)
  • #6 DIGの様子(人・土の情報を記入)
  • #7 DIGの様子
  • #8 那覇市防災マップの説明と第一部の総括
  • #9 グループ発表
  • #10 第二部シュミレーションの説明
  • #11 シュミレーション開始
  • #12 シュミレーションの様子(大津波警報発令)
  • #13 シュミレーションの様子2
  • #14 シュミレーションの様子3
  • #15 グループ発表(真和志地域、旧那覇地域)と那覇西消防署による講評
  • #16 事例紹介(若狭地域)
  • #17 事例紹介(那覇市社会福祉協議会、)
  • #18 事例紹介(繁多川公民館)
  • #19 那覇市市民防災室による講評と課題・提案
  • #20 グループ討議(地域コミュニティ活動により多くの人を取り込むには?)
  • #21 中米の事例紹介と総括

若狭公民館では、今後も継続的に「防災」に関する講座を開催します。
次はより具体的に、若狭近隣地域の防災について考えていける内容を調整しており、11月11日、18日に実施予定です。
詳細は、決定次第お知らせします。
(宮城)